Ymerdrys

ライ麦パンのグラノーラ

デンマークにも春がやってきました。

春を告げる花イチリンソウが橅の森で絨毯を敷き詰めたように咲き、球根花の水仙やチューリップ、樹花のミラベルや桜、そして、木蓮が街に彩りを添え、りんごの花も蕾をつけています。

もう大丈夫と思っても、4月には一時的に雹や霰がふったりするのでまだまだ油断大敵ですが、あちこちで花が咲き誇り、一日一日、陽の光を感じる時間が長くなると、春の息吹が身体の隅々まで行き渡るような気がします。お天気のよい日には、公園の芝生でのんびりと日光浴をしている人を見かけるのもこの時期から。典型的な春のヒュッゲの情景です。半年ほど太陽の光を待ち侘びているわけですから、せっかくの恩恵は真っ先にあやかりたい、そんな気持ちでしょうか。

どんどん春らしくなっていくのは景色だけではありません。まだまだ南欧からのものが主流ですが、春の食材もお目見えする頃になりました。一番乗りは、スペイン産の新にんじん。葉つきにんじんを見かけると春だなぁと嬉しくなります。地物では、葉ニンニクがおいしい季節です。森や野原に生息するイラクサも、今は柔らかくておいしいので、摘み草に興じなければなりません。イラクサをさっと茹でると、独特の深い緑になります。この時期は緑の地野菜が入手しにくいため、イラクサはありがたい緑の供給源です。我が家では、越冬したじゃがいもとポロネギをじっくり炒めて煮込んだスープにイラクサを加えてブレンダーにかけたポタージュを繰り返し作ります。ちなみに、復活祭には、生命の誕生を象徴する卵を使った料理を作りますが、このポタージュに半熟気味の茹で卵や落とし卵と自家栽培のコショウソウを組み合わせると、復活祭らしい一品として楽しめます。

この季節、今か今かと待ちわびる野菜はルバーブです。料理に使うよりも、砂糖を加えてコンポートやジャムとして使ったり、お菓子に入れたりすることが多い食材です。デンマークのりんごはおいしいけれど、3月に入ると国産が品薄となり、4月にはイタリアやオーストリア、フランス産しか手に入らなくなります。作る料理が異なるためか、保存方法が異なるためか、りんごとはいえ同じ味ではないため、いつもの料理が同じように作れない状況に陥ります。我が家では、4月に入ると、根菜をジュースとして搾るときの甘味づけ以外でりんごを使うことはお休みし、くだものは南欧からの柑橘類がメインになります。いちごを皮切りに始まるベリーのシーズンは6月以降なので、ルバーブはそれまでの間、地ものの食材として貴重な存在です。

最近は、ルバーブを甘酢マリネにしてサラダに加える手法も見かけますし、ローストした肉料理にも付け合わせとして使いますが、スイーツに使い、独特の美しい色と酸味を楽しむ方法が王道ではないかと思います。一般消費者には4月の入手が難しいルバーブは、レストランでデザートによく使われます。待ち侘びた春を楽しむ食材という点で、日本の筍やふきや蕨と似ていますね。

我が家では、ルバーブ出回ってくると作るスイーツの定番があり、順繰りに作っていると、あっという間に苺の季節を迎えます。

ルバーブを生地に加えた焼き菓子もおいしいですし、ルバーブで作るレモネードやソルベも美しい色に仕上がるので春らしい季節感を楽しめますが、コンポートは、使い回しのよさが抜群です。鍋でもオーブンでも作れるので、その日の日程やごはん作りの工程に合わせて調理方法を選ぶと効率的です。レシピはこちらでご紹介しています。朝食のオートミール粥やヨーグルトに添えたり、アーモンドクッキーとホイップクリームやカスタードクリームと組み合わせて、「トライフル」というデザートを作ったり、おやつにライ麦パンと一緒に「ルバーブごはん」として楽しんだりできるので、春に必ず冷蔵庫に常備している一品です。オーブンで簡単に仕上がる鶏もも肉のローストの付け合わせにもお勧めです。 赤いルバーブで作ると美しい色に仕上がり、テーブルが華やぎます。

さて、今年はライ麦パンを楽しむ方法をさまざまな形でご紹介していますが、今月は、ライ麦パンで作るグラノーラをご案内したいと思います。そぼろ状に砕いたライ麦パンに甘味を加えてローストして作る自家製シリアルです。ライ麦パンがパサパサしてきた時や、端の硬い部分などをおいしく食べる方法です。デンマークでは、無糖ヨーグルトなどの発酵乳にたっぷりかけて食べるスタイルが定番朝食の一つとなっています。ヘルシーなおやつとしても重宝します。

いちごの季節にはフレッシュないちご、りんごの季節にはりんごのスライスや煮りんごなどを添えますが、春はルバーブのコンポートが定番です。発酵乳にライ麦パンのグラノーラとフルーツの組み合わせは、タンパク質と炭水化物、そしてビタミンと繊維質をワンボウルで摂れるため、忙しい朝にも重宝します。この組み合わせは腹持ちがよく、血糖値も安定しているため、お昼までの時間を気持ちよく過ごせのが嬉しい。ヨーグルトとフルーツだけだと、しっかり噛むことが難しいと思いますが、ライ麦パンのグラノーラを加えると、そのカリカリした食感を楽しむだけではなく、噛みやすくなるので消化を助けることができます。ライ麦パンでオープンサンドイッチを楽しんだけど、中途半端に残っちゃったという時などにぜひお試しください。あっという間になくなりますよ。

今回は、デンマークでYmer Drys(発酵乳トッピング)と呼ばれている最も基本的なライ麦パンと砂糖で作る方法をご紹介しますが、ナッツやドライフルーツを加えてもおいしいです。合わせてお試しください。


ライ麦パンのグラノーラ


材料

<ルバーブのコンポート>

  • ルバーブ300 g[*1] 

  • 砂糖60〜90g[*2] 

  • レモン汁 大さじ1

<ライ麦パンのグラノーラ>

  • ライ麦パン 150 g 

  • 砂糖[*3] 25 g

※ 以下は省略できますが、応用編としてご案内しておきますね。

  • (お好みで)ヘーゼルナッツ 25 g [*4]

  • (お好みで)シナモンやカルダモンなどのスパイス 小さじ1
    もしくは、純ココア 小さじ2


作り方

 <ルバーブのコンポート>

1.  ルバーブは2cm幅に切る。

2.  鍋、もしくは耐熱皿にルバーブ、砂糖、レモン汁を入れて混ぜ、水分がでるまで30分程おく。

3. (鍋の場合)中火で熱し、煮立ったらアクを取り除く。お好みのとろみ加減になるまで10分くらいを目安に煮る。水分が多い場合、最後の数分を強火にして水分を飛ばす。

(オーブンの場合)170°に予熱したオーブンで25分を目安に焼く。ある程度、柔らかくなっていれば、火を切って、そのままオーブンに入れたまま、余熱で火を通してもよい。途中で一度全体を混ぜると、むらなく仕上がる。冷蔵で数日保存できる。

<ライ麦パンのグラノーラ>

1.  オーブンを160°に予熱する。

2.  ライ麦パンと砂糖をフードプロセッサーでそぼろ状に砕く。(種子やスパイスを加える場合は、一緒に攪拌する。)

3.  オーブンペーパーを敷いた天板に広げ、20分を目安にローストする[*5]。途中で二、三回木べらで混ぜて、均等にローストする。

4.  きれいにローストできたら、オーブンから取り出し、もう一度、全体をよく混ぜる[*6]。完全に冷めたら、しっかり蓋ができるガラス瓶などに入れて保存する。

NOTE:

*1 量は300 gでなくても大丈夫です。お手持ちのルバーブの量でお作りください。

*2 ルバーブの重量の20〜30%をお使いください。ルバーブ200 gだと、砂糖は40gになります。

*3 きび砂糖でもおいしく仕上がりますが、黒砂糖をお持ちでしたら、コクが出るのでお勧めです。ぜひお試しください。メープルシロップでもおいしく作れます。

*4 アーモンド、ひまわりの種、かぼちゃの種などでも代用できます。

*5 オーブンの機種や使用年数などでローストの速度が異なることがあるため、ロースト時間は目安にして、焦げないように調整してください。

*6 レーズンなどのドライフルーツを加える場合、この段階で加えると馴染みがよくなります。

デンマーク風のライ麦パンは、「広島アンデルセン」およびその通販サイト「アンデルセンネット」で「ソフトカーネラグブロート」という名前で販売されています。アンデルセン・デンマーク店で人気の高いライ麦パンを再現しているそうです。


写真撮影: Jan Oster

<ご案内>
掲載写真はInstagram @sachikokuramoto.dkでもご紹介します。

プレート: Gurli Elbackgaard

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