Guleærter - en plantebaseret udgave
えんどう豆のスープ
デンマークの3月は、遠くからの春の訪れを感じる季節です。くろうたどりの澄みきった鳴き声で目が覚める日が多くなり、9時近くまで暗かった朝は気がつくと7時には明るくなっていて、太陽も日々、その力を増していきます。秋から冬にかけて、厚くどんよりとした雲が空を覆い、日中でも薄暗いことが多いのですが、3月になると、重苦しく感じていた雲はどこかに行き、すっきりとした空が大きく広がっています。気温は一桁が続くので、春の本格的な到来はまだまだ先ですが、春の兆しに喜びを感じます
日本の春は、梅や桃などの木に咲く花から始まりますが、デンマークでは球根花が春を告げてくれます。黄花節分草や待雪草が庭や道端でひっそりと咲くのは2月。零度近くの気温が続き蕾の時期が長いため、一ヶ月くらい楽しめます。3月になるとクロッカスが芽を出します。今年のクロッカスの開花が少し早めだったのか、黄花節分草と待雪草とクロッカスが一緒に咲いている光景を目にしました。クロッカスの花は、黄花節分草や待雪草と比べて大きいためか、インパクトが強い花です。一般家庭や公園などの公共施設の庭などで、紫や黄、白のクロッカスが鮮やかに咲いている様子は美しい春への誘いです。
長かった冬の終わりが見えてくると、春野菜への渇望が高まる一方、くたびれ気味の冬野菜を愛おしく感じます。あと数週間もすると、秋まで入手できないのだと思うと、今シーズンの冬野菜をしっかり楽しんでおこう、という気持ちになります。3月は、先の投稿でご案内したランプフィッシュや鱈の子といった春を感じる素材を楽しむ傍ら、根セロリ、にんじん、パースニップ、根パセリ、コールラビ、菊芋、ビート、ケールなどのデンマークの冬野菜を、これで今シーズン最後かなと思いながら楽しむ季節でもあるのです。
今回、ご紹介する料理は、えんどう豆のスープ。乾燥豆から作る伝統的な冬の料理です。ライ麦パンをお供にすると、これだけで夕ご飯として成立するので、忙しいとわかっている日に予め作っておくと重宝します。デンマークでは、冬野菜との組み合わせが4月上旬まで楽しめます。
えんどう豆は、キャベツやケールを並んでデンマークで最も長い歴史を持つ野菜です。日本で春に楽しむえんどう豆は緑ですが、同じ豆を十分に成熟させてから収穫すると黄色になるということは、デンマークで暮らすようになって知りました。お隣の国ドイツでは、黄色ではなく、緑の乾燥えんどう豆が売られています。いずれも同じえんどう豆なのですが、収穫時が未熟なものか完熟なものかで色が違うのだと説明を受けたことがあります。また、乾燥えんどう豆は、皮を剥いでから乾燥させるので、豆が自然に二つに割れていることも特徴です。そのため浸水する必要もなく、思い立った時にすぐ使える便利な乾燥豆です。日本では「スピリットピース」という名前で売られています。黄色のえんどう豆には「イエロー・スピリットピース」、緑色のえんどう豆には「グリーン・スピリットピース」という名前がついていました。
「えんどう豆のスープ」には、本来、塩漬け豚の茹で汁を使います。ポトフのように茹でた塩漬け肉と野菜を楽しみ、次の日に塩漬け肉の茹で汁で豆と根菜を煮てスープとして楽しむという料理です。豆と根菜をくたくたに煮た「ごった煮感」の強いスープは、イタリア・トスカーナ地方の名物料理「リボリータ」などにも共通する、ヨーロッパ全土で見られる伝統的なスープの形態です。デンマークでも1000年以上も前から作られていた料理です。ライ麦パンを添えることもデンマークらしいなと思います。
昔、産業革命以前の話ですが、デンマークでは、庭の菜園で一家が食べる野菜を育てることが一般的でした。その菜園では、春からクリスマス前まで豚や山羊、鶏を一匹ずつ飼い、家庭で使うミルクや肉を確保していました。デンマークの冬に収穫できる野菜はごくわずかなので、家族の食料を確保することが厳しく、豚はクリスマスの前に解体し、クリスマスのお祝いに使う量以外は塩漬けにして保存し、一年に渡って食べていました。大切に保存していた塩漬け肉を使うときには、煮汁まで無駄なく使っていたのですね。
塩漬け肉を常備していた時代と違い、肉を塩漬けするところからスタートすると、どんなに早くてもスープの順番が回ってくるのは5日後という工程です。そして、肉の塊をおいしく煮る作業も最低で数時間かかります。共働きが当然で、家に帰ってから料理にかける時間は30分という現代の核家族のキッチンでは、なかなか手軽に作れない料理です。しかし、豆と野菜を楽しむ料理と割り切ってしまえば、それ以前の工程を全て省くことができます。そして、浸水しなくても、思い立ったらすぐ作れるという乾燥えんどう豆のメリットが享受できます。この方法だと熟成させた塩漬け肉の旨みを持つ煮汁は手に入りませんが、豆と野菜の旨味をストレートに感じる滋味深い優しい味の一皿が楽しめます。
誠文堂新光社刊の「北欧料理大全」ではカトリーネ・クリンケンさんのレシピをご紹介していますが、今回は、私がいつも作っているレシピを日本で手に入りやすい食材に変更してご案内します。デンマークでは、ライ麦パンと一緒に楽しみます。ライ麦パンの入手が難しいようでしたら、カンパーニュのような田舎パンでお試しください。レシピ通りでなくても、季節の地野菜の組み合わせでもOKです。じゃがいもを乾燥豆の重量と同じくらい、旬の地野菜を乾燥豆の重量の2〜3倍くらい使えば、おいしく仕上がります。花冷えで肌寒い日にいかがでしょうか?
[補足]デンマーク風のライ麦パンは、「広島アンデルセン」およびその通販サイト「アンデルセンネット」で「ソフトカーネラグブロート」という名前で販売されています。アンデルセン・デンマーク店で人気の高いライ麦パンを再現なさっているそうです。
えんどう豆のスープ
材料
スプリットピース(乾燥えんどう豆) 150 g
玉ねぎ 100 g
にんじん 100 g
セロリ 1本
ポロねぎ(太ねぎ)1本
大根 100 g
じゃがいも 150 g
にんにく 1 〜 2片
菜種油 大さじ1
塩 小さじ1
タイムの枝 お好みで(省略可)[*1]
粒胡椒 3 〜 5粒
カレー粉(省略可) 小さじ⅛[*2]
塩 適宜
りんご酢 適宜[*3]
青菜 お好みで適宜
作り方
1. スピリットピーを水でさっと濯ぎ、ボウルに入れて、野菜を切っている間、浸水させる。
2. 野菜を1cm角に切る。にんにくは薄皮を剥き、包丁の背で潰す。
3. 野菜を鍋に入れ、油と塩を加え、蓋をして中火で蒸し煮にする。[*4]
4. 野菜が透き通ってきたら、カレー粉を加えて、さらに数分蒸し煮にする。
5. 豆の水気を切って鍋に加え、ひたひたよりも少し多めに水を加える。
6. タイムの枝と粒胡椒をお茶パックに入れ鍋に加え一煮立ちさせる。
7. 煮汁が沸騰したら、蓋をして、ふつふつするくらいの火加減で45分〜1時間ほど豆がほろほろに煮崩れるまで煮込む。
8. タイムの枝と粒胡椒が入ったお茶パックを出し、全体の1/3をミキサーにかける。1/3の具をすり鉢に入れて潰してもよい。
9. 潰した野菜をスープに戻し、全体を混ぜて、湯で水分量を調節する。塩と酢で味を整える。
10. 青菜を加え、しなっとするまで火を通す。
11. パンを添えて、あつあつをどうぞ。
NOTE:
*1 ローリエで代用できます。
*2 隠し味です。
*3. 米酢やレモン果汁で代用できます。
*4. お急ぎの場合は、カップ1/2の水を加えて蒸し煮にしてください。夏野菜でもおいしく作れます。
<レシピを使ってくださった方へ>
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写真撮影: Jan Oster