Smørrebrød med nye kartofler

新じゃがスモーブロ

デンマークでは夏至の頃に新じゃがの季節を迎えます。

 いちごやグリーンピースと並んで初夏6月を代表する新じゃがは、デンマークの人々にとって、夏の到来を象徴する食材です。夏を待ち焦がれる気持ちに相当するのでしょう。毎年、新じゃが初入荷の卸値は新聞の記事になっています。

じゃがいもは1700年代に伝来しましたが、200年近くの間、家畜の飼料として栽培されていました。極貧層がじゃがいもを食していたという記録も見られます。1900年代初期にビタミンCの含有率が高いことがわかり、脚気の治療法として食用され、ようやく一般の食材として普及しました。現在、おばあちゃん風とか伝統的と呼ばれる家庭料理には、じゃがいもを付け合わせることが多いので、その変遷には驚くばかりです。

日本では庭でさつまいもを育てることができますが、デンマークではじゃがいもが収穫できます。新じゃがの季節はちょうど学校が夏休みに入る時期に重なるので、子どもたちもじゃがいも掘りが楽しめます。掘り立てのじゃがいものみずみずしさは格別で、薄くてやわらかい皮は、そっと撫でるだけでするっと剥けます。 

洗って土を落とした新じゃがは、残っている皮をつけたまま、濃いめの塩水で少し硬めに茹でると、独特のナッツのような甘みとコクが引き立ちます。温かい夕食の付け合わせにしたり、旬の野菜と一緒に初夏らしいサラダに仕立てます。普通のじゃがいもに比べて小ぶりなものが多いので、食卓に並べると一目瞭然。「あ!新じゃがだ!」と歓声が上がります。茹でたての新じゃがには、発酵バターを絡ませるのが一般的。庭で採れたあさつきやパセリのみじん切りを一緒に絡ませてもおいしいですね。シンプルに仕上げるのがポイントだと、かつて、料理上手なおばあちゃんから教わりました。じゃがいもは小ぶりのものがおいしいこと、そして、新じゃがは、特に小さめのものを選ぶように教わったことも懐かしい思い出です。

誠文堂新光社刊「北欧料理大全」の著者カトリーネ・クリンケンさんが、最近、鰹のフライパン焼きと新じゃがという一品をご自身のインスタグラムに掲載していらっしゃいました。素材を活かしたシンプルな料理法は、カトリーネさんの料理哲学を反映しています。ちなみに、鰹は、少量のはちみつと醤油での調味でした。カトリーネさんご自身が経営なさっているはちみつ専門店の厳選はちみつをお使いでしたが、はちみつを甘味として使うと酸味がわずかに加わり、旨味を一層引き立てると伺いました。

オープンサンドイッチの一種「スモーブロ」は、デンマークの食文化を代表する料理のスタイルです。「サンドイッチ」には手で食べるものというイメージがありますが、「スモーブロ」は、パンが見えなくなるくらいの具材をのせるのがよいとされているので、テーブルの上でナイフとフォークを使って食べるのが普通です。半分に切ったライ麦パンに何かをのせたり塗ったりして、手でぱくんと食べるタイプもありますが、それは「〇〇ごはん」という別の名称がついています。じゃがいもだったら「じゃがいもごはん」ですね。これは、あくまでも概論で、実際には「今日は、じゃがいもごはんにしようか?」「あ!じゃがいもごはんだ!」というふうに、「じゃがいもスモーブロ」を「じゃがいもごはん」と呼ぶこともあります。

「新じゃがのスモーブロ」には不思議な存在感があります。新鮮な新じゃがを少し多めに茹でておき、翌日の昼食にスモーブロとして楽しむのは、この季節ならでは。ライ麦パンの酸味とごつごつした食感が、新じゃがのやさしい味わいやみずみずしい食感と好対照で、魅力的な組み合わせです。同じ頃に採れるきゅうりやラディッシュ、トマトとの組み合わせなども、初夏ならではのおいしさ。伝統的な鰊のマリネと新じゃがの組み合わせが大好きという声もよく耳にします。鰊のマリネとの組み合わせは「北欧料理大全」に掲載してありますので、そちらを参考になさってくださいね。

さて、今回のレシピは「新じゃがスモーブロ」です。日本の暑い夏、じゃがいもを電子レンジや炊飯器の蒸し機能を利用予め用意しておけば、簡単に滋味深い食事が整うかと思います。入手しやすい食材での代用案やさらに簡単なレシピもご案内しています。ぜひ一度、お試しくださいね。


新じゃがスモーブロ


材料(2人分)

<夏野菜のフレッシュチーズ和え>

  • フレッシュチーズの燻製、もしくはフロマージュブラン[*1]    150〜200 g

  • 無糖プレーンヨーグルト[*2] 適宜

  • ラディッシュ  3〜4個

  • きゅうり 1/2 本

  • シブレット(西洋あさつき)[*3]  小口切り 大さじ1程度 

  • 塩・胡椒 適量

<スモーブロ①  新じゃがと夏野菜のフレッシュチーズ和え>

  • ライ麦パン 8〜10 mm厚のもの2枚

  • バター お好みで(省略できます)

  • 茹でた新じゃが(厚切りもしくはくし切り)ライ麦パンにびっちり並ぶ量

  • 夏野菜のフレッシュチーズ和え 大さじ4杯

  • シブレット(西洋あさつき)[*3] 適宜

<スモーブロ②  新じゃがとトマト>

  • クリームチーズ 大さじ2

  • 無糖プレーンヨーグルト[*2] 小さじ1

  • シブレット(西洋あさつき)[*3] 小口切り 小さじ2

  • ライ麦パン 8〜10 mm厚のもの2枚

  • 茹でた新じゃが(1cm厚くらいに切る)適量

  • トマト(小さめのもの) 適量

  • 塩 適宜

  • シブレット 適宜

  • えんどう豆のスプラウト(豆苗) 適宜


作り方(2人分)

<夏野菜のフレッシュチーズ和え>

1.     チーズとヨーグルトを混ぜ、マヨネーズのような柔らかさにする。

2.     ラディッシュときゅうりを薄くスライスし、薄く塩をまぶして5分くらいおく。水分がでてきたら、よく絞っておく。

3.     2.とシブレットを1,で和え、塩・こしょうで調味し、全体が馴染むまで、冷蔵庫で30分くらい冷やしておく。

<スモーブロ①  新じゃが と夏野菜のフレッシュチーズ和え>

1.     ライ麦パンにバターを塗り、新じゃがを重ならないように並べる。

2.     夏野菜のフレッシュチーズ和えをのせ、シブレットを飾る。

<スモーブロ②  新じゃがとトマト>

1.     クリームチーズにヨーグルトとシブレットを混ぜる。[*4]

2.     ライ麦パンに1.を塗り、新じゃがとトマトを交互にに並べ、塩をぱらっとふる。

3.     シブレットとえんどう豆のスプラウトを飾る。

 NOTE:

*1 味は変わりますが、サワークリームで代用できます。

*2 マヨネーズも使えます。私はマイルドな豆乳ヨーグルトを使っています。

*3 あさつきで代用できます。

*4  ヨーグルトはシブレットを混ぜやすくするためなので、シブレットが潰れないようにクリームチーズと和えることができれば、ヨーグルトを省いてもよい。

<ヴィーガン対応>

チーズの代わりに、塩や塩麹で調味したおぼろ豆腐できゅうりとラディッシュを和えてもおいしい一品になります。その際はしっかり水気を切ってくださいね。チーズをマヨネーズのような濃度にするために使うヨーグルトは、ここでは必要ありません。すりごまを加えると水気を吸ってくれ、コクも出ます。

<おまけ・シンプルな『じゃがいもスモーブロ』>

  • ライ麦パン 8〜10 mm厚のもの2枚

  • バター、マヨネーズ、クリームチーズなどお好みで

  • 茹でじゃがいも(1cm~1.5cm厚)適量

  • 切るだけでよい野菜(トマトやきゅうり、レタスなど)

  • お手持ちの香味野菜(大葉、細ねぎ、玉ねぎなど)もしくは 薬味

  • お好みの調理料(塩麹やたれ、ドレッシングなど)

1. ライ麦 パンに薄くバターもしくはマヨネーズなどを塗り、新じゃがを重ならないように並べる。

2. 野菜を上に重ね、お好みの調味料で軽くた和え香味野菜もしくは香味を天盛りにする。

<ライ麦パンの入手について>

デンマーク風のライ麦パンは、「広島アンデルセン」およびその通販サイト「アンデルセンネット」で「ソフトカーネラグブロート」という名前で販売されています。アンデルセン・デンマーク店で人気の高いライ麦パンを再現しているそうです。


写真撮影: Jan Oster

<ご案内>
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木製プレート: Akiko Ken Made

プレート: Gurli Elbackgaard

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