Rugbrødsknas
デザートトッピング「ライ麦パンのクネス」
7月はすぐりの季節です。
ブルーベリーや苔桃(リンゴンベリー)などは冷涼な森林地帯に自生するため、スカンジナビア半島の森の多い地方が名産地。スウェーデンやフィンランドで頻繁に使われます。一方、デンマークでは、庭や畑ですぐりや苺を栽培する伝統があります。すぐりは、一つの言葉で括ってしまうのが疑問に思えるほど、色や形状、味が異なるものが多いように思います。代表的なすぐりは、丸すぐり、赤房すぐり、黒房すぐり。丸すぐりはグースベリー、赤房すぐりはグロセイユ、レッドカラント、黒房すぐりはカシス、ブラックカラントという別名を持っています。いずれも低木で、7月初旬から下旬にかけて、丸すぐり、房すぐりの順で熟していきます。
丸すぐりは、薄緑と赤紫の品種が一般的。ころんとした形がかわいらしいですね。効率的な収穫が難しいためか、スーパーでの入手は困難です。家庭菜園の他には農園などで入手できます。
完熟まで待たず酸味を十分感じるくらいで使うと個性的な味が楽しめるというのが、丸すぐりをこよなく愛する夫の持論なので、我が家では完熟の少し手前で収穫します。赤紫の方が見栄えよく仕上がるように思うのですが、私の周りには薄緑の丸すぐりを偏愛する人が多いため、薄緑の丸すぐりを使った料理やデザートが夏のもてなしの定番です。完熟したものを使うと火を通した時に鶸色に仕上がらず、黄味を帯びてしまうので、きれいな鶸色に仕上げるためにも収穫時期は重要な鍵を握っています。丸すぐりの調理の基本は「さっと煮」。形が残るようにさっと煮て冷やしておきます。目的に応じて、調理時に加える水と砂糖の量を調節します。すぐりの重量の5〜10%くらいの砂糖を加えると、酸味が利いた仕上がりになり、コンポートやソースとして使えます。我が家では朝の定番オートミール粥に添えて楽しんでいます。フライパンでカリッと焼いた旬の鰹の切り身に、新じゃがと丸すぐりのソーズの組み合わせも、夏らしい一品。スウェーデンでミートボールに苔桃の砂糖煮や砂糖漬けを添える伝統と似ていますね。すぐりの重量の30%くらいの砂糖を加えると、ジャムやソルベになります。丸すぐりは収穫量が少ないので、なめらかな舌触りのソルベは、毎年一回きりの楽しみです。
夫の嗜好を受け継いだ次女の誕生日は、8月上旬。毎年、収穫したての丸すぐりを冷凍し、丸すぐりのさっと煮を使ったお祝いケーキで誕生日を祝います。生クリームをたっぷり使った酸味のあるムースが大好きな娘の嗜好に合わせて、ムースとジェノワーズ生地を組み合わせて作ります。丸すぐりの酸味はルバーブとよく似ていて、ルバーブのお菓子を丸すぐりに置き換えて作っても、おいしく仕上がります。
さて、今月は、ライ麦パンをデザートに使う一品をご紹介します。少し日にちの経ったライ麦パンを最後までおいしく使い切る方法です。硬くなったライ麦パンをおろし金でおろすのは大変ですが、フードプロセッサーやミルサーを使うと、簡単に粉末になります。少し粗く仕上げると食感に変化が出るので、お勧めです。
バターを使って炒ると香ばしく、ココナッツオイルを使うとほんのり甘く仕上がります。デンマークでは、おろしたライ麦パンには粗く砕いたヘーゼルナッツと組み合わせるのが王道ですが、胡桃やアーモンド、かぼちゃやひまわりの種でもおいしく仕上がります。少し日にちが経ったライ麦パンの使い方は、こちらでもご案内していますが、今回の「クネス」は少し粗めの食感が特徴です。また、デザートメインで使えるように、ナッツと砂糖の配合が高めです。カバー写真では、すぐりのさっと煮とクリームを組み合わせていますが、旬のくだもののコンポートを合わせてもおいしいです。ヨーグルトとジャムと一緒に組み合わせても食感に楽しさが加わり、味に深みが出ます。お好きな組み合わせでお試しくださいね。
ライ麦パンのクネス
材料
ライ麦パン 100 g
バター[*1] 20 g
黒糖[*2] 20 g
ヘーゼルナッツ[*3] 20 g
ダークチョコレート[*4] 20 g(お好みで)
作り方
1. ライ麦パンを1〜2cmの角切りにし、砂糖と一緒にフードプロセッサーもしくはミルサーで少し粗めに砕く。
2. バターを溶かしたフライパンに1.を加え、ゆっくり中火で煎る。
3. その間に1.で使ったフードプロセッサーにヘーゼルナッツを入れて、少し粗めに砕く。フライパンに加え、よい香りが立つまで煎る。
4. クネスをバットに移し、平らにした状態で粗熱をとる。冷めるとパリッとする。
5. (お好みで)チョコレートをざくざく切り、常温になったクネスに加える。しっかり蓋ができるガラス瓶などに入れて保存する。
NOTE:
*1 ココナッツオイルでも作れます。
*2きび砂糖でも作れます。
*3 アーモンド、ひまわりの種、かぼちゃの種などでも作れます。
*4 カカオ含有率が70%以上のものをお勧めします。
<カバー写真のデザートについて>
赤い丸すぐりのさっと煮とカスタードクリームとホイップした純生クリームを合わせたディプロマットクリームを交互に二度重ねています。さっと煮には、すぐりの重量の10%のきび砂糖を使用しました。すぐりが手に入らない場合、2 cm程度の角切りにしたキウイフルーツをさっと煮ると、緑の丸すぐりのさっと煮と同じようなきれいな色に仕上がります。ディプロマットクリームの代わりに、非加熱で作れるこちらのクリームを組み合わせてもおいしいです。お試しくださいね。
デンマーク風のライ麦パンは、「広島アンデルセン」およびその通販サイト「アンデルセンネット」で「ソフトカーネラグブロート」という名前で販売されています。アンデルセン・デンマーク店で人気の高いライ麦パンを再現しているそうです。
写真撮影: Jan Oster
<ご案内>
掲載写真はInstagram @sachikokuramoto.dkでもご紹介します。