Gløgg
スパイス風味のホットワイン『グルッグ』
今年もクリスマスを待つ季節がやってきました。
デンマークでの「クリスマス」は、「12月」の同義語のように感じます。本来のクリスマス、12月25日から4回ほど遡った日曜日から始まるアドヴェント(待降節)の4週間から12月24日のクリスマス・イヴを経て、祝日の12月25日と12月26日を指すことも一般的です。
クリスマスを待つ季節は、厳かでありながらも華やかさも持ち合わせています。街のあちこちでクリスマスの飾り付けが華やかになり、クリスマスを迎える準備で買い出しに出かける人々で賑わいます。クリスマス・マーケットもあちこちで見られます。
12月はクリスマスを迎える楽しさが加わるせいか、独特の気忙しさを感じます。クリスマス・イヴの晩餐を一緒に迎える家族や親族それぞれに贈り物を用意する慣習がありますが、10〜20名が集まることも特別なことではないので、贈り物の用意もかなりの数になります。そして、クリスマスを待つ季節に焼くクッキーなどのクリスマス菓子を焼いたり、クリスマスの飾りを作ったり、クリスマスの祝日に集まる親族や友人との午餐に使う料理の仕込みがあったり、クリスマスマーケットに出かけたり、と、週末はクリスマスを待つ季節ならではの行事が盛り沢山です。また、平日、特に金曜日には、会社や学校、親しい友人単位でクリスマス・ランチと呼ばれる年忘れの会が催されることも多く、忙しさに拍車がかかります。
「アドヴェント」(待降節)は、クリスマスから4回ほど遡った日曜日から始まる4週間余りの期間ですが、初日にあたるアドヴェントの第一日曜日は、特別感が高い日です。
今年のアドヴェントの第一日曜日は、12月3日。アドヴェントの第一日曜日は、11月の最終日曜日のことが多いのですが、今年は12月24日のクリスマス・イヴが日曜日で、アドヴェントの第四日曜日となります。そのため、今年はクリスマスを待つ時期が最短になり、ちょっと損をしたように感じる人が多いと聞いています。
我が家では、アドヴェントの日曜日に、エーブルスキーバと呼ばれるたこ焼きを少し大きくした形のまんまるワッフルを焼きます。エーブルスキーバは冷凍品が主流になっていますが、生地を作って専用の焼き型で焼くと、冷凍品とは明らかに違うおいしさに出会えます。エーブルスキーバのレシピは、誠文堂新光社刊「北欧料理大全」にも紹介がありますが、ネット上でも検索できます。
エーブルスキーバにぴったりな飲み物は『グルック』。スパイス風味のホットワインです。スパイスをふんだんに使ったシロップを作っておくことがポイントです。このシロップとレーズンを赤ワインに加えて温めます。最後にポートワインやラム酒を入れます。アルコールで暖をとるのです。アーモンドは、湯むきにして縦三つにカットし、グルッグを楽しむ直前に加えます。最初から加えることもできますが、アーモンドにワインの色が移りますし、食感にも影響するので、最後に加える形がおすすめです。
デンマークの冬の気温は零下になることもありますが、零下20度まで下ることは稀です。数字を見ただけでは、そんなに寒くないだろうと思いがちなのですが、デンマークの冬の厳しさは独特で、冬の湿度がとても高く、その湿度が体感温度をぐっと下げているようです。防寒コートのジッパーをきちんと閉めることはもちろんですが、首元や手首から、湿気た冷たい空気が入ってこないようにすることや、足元をしっかり防寒することが大切だと教わりました[註] 。
厳しく感じる冬に入った頃、ちょうどクリスマスを迎えるための準備で外に出ることが多くなりがちなのですが、街中のグルッグの屋台には、よく人が集まっています。クリスマスの風情を感じる代表格です。
さて、今年10月に帰国した際、ハッピークッキングさん主催でデンマークのライ麦パン「ロブロ」をご紹介する講座にお招きいただきました。その講座で講師をお勤めになった徳永久美子さんからのご依頼で、デンマークで作られているスパイス風味のホットワイン『グルッグ』をノン・アルコール版でご紹介しました。みなさんが喜んでくださり、レシピをぜひ!とご依頼がありましたので、こちらでご紹介します。ぜひお作りになってみてください。
今回は、赤ワインベースのグルッグを紹介しましたが、こちらでは、りんごのストレートジュースを使った「りんごグルッグ」をご紹介しています。合わせてお試しください。
寒い季節ならではの飲みもので、身体も心も温めながら楽しんでいただければ嬉しいです。
文: くらもとさちこ
写真撮影: Jan Oster
[註]デンマークでは、Rのつく季節、つまり9月から4月までは必ずウールの肌着と靴下を身につける習慣があります。デンマークの人にとっては、あたりまえのことらしいのですが、私は子育ての中で学びました。ウールは汗を吸い取ることができるため、いつも身体をほんわかと守ってくれます。ウールの肌着は、使う度に洗うと保温効果が下がるため、シーズン中は洗わなくてもよいことなどにも特徴があります。
『グルッグ』
スパイス風味のホットワイン
[材料]
<スパイス・シロップ> 3回分
水 300 ml
しょうが(2 mm厚スライス)6 cm厚
クローブ(ホール) 20粒
シナモン・スティック 4本
カルダモン(ホール)25粒
黒こしょう(ホール) 25粒
八角・スターアニス 1個 (お好みで)
みかんの皮 2個分
きび砂糖 300 – 500 g (お好みで)
<ラムレーズン>
レーズン 100 g
ラム酒 もしくは ぶどうジュース 100 ml
<グルッグ>
スパイス・シロップ 上記レシピの⅓量
赤ワイン(できれば、フルボディ)1本(750 ml)
ポートワイン 1カップ
ブランデー、もしくはコニャック 1/2カップ
きび砂糖(お好みで)
<グルッグの具>
アーモンド 約80 g
みかん 1〜2個(1cmくらいの角切り)
りんご ¼個くらい(1cmくらいの角切り)
[作り方]
<スパイス・シロップ>
材料を全て鍋に入れ、蓋をして10分ほど煮出す。
粗熱をとった後、保存容器に入れ、数日、冷蔵庫で寝かせてスパイスを抽出させる。
スパイス・シロップを濾し、スパイスを取り除く。
<ラムレーズン>
保存容器にレーズンとラム酒を入れ、一晩、浸しておく。(一週間以上、漬け込むとおいしい)
ぶどうジュースの場合は、一晩、浸しておく。
<グルッグの具>
アーモンドを入れたボウルに熱湯を注ぎ、10分ほど待つ。
親指と人差し指でアーモンドをなでるようにして皮を剥き、縦三つにカットする。
みかんは皮をむき、1 cm角に切る。りんごも1 cm角に切る。
<グルッグ>
スパイス・シロップをざるで濾し、スパイスを取り除く。
大きな鍋に赤ワインを注ぎ、スパイス・シロップ、レーズンを加えて、あつあつになるまで温める。沸騰させないこと。(ノンアルコールにしたいときには、ワインだけをしっかり沸騰させて、アルコール分をとばす。)
ブランデー、もしくは、コニャックを加える。砂糖で甘さを調節する。
1cm角のみかんとりんご、湯むきアーモンドをカップに入れ、あつあつのグルッグを注ぐ。
NOTE:
スパイスは全て揃わなくても大丈夫です。シナモンスティックと生姜のスライスだけでも作れます。
柑橘類はノーワックスのものをお使いください。
アーモンドは、スライスやダイスでも代用できます。
スパイス・シロップは、冷蔵庫で数週間保存できます。
<ノン・アルコールをご希望の場合>
ノン・アルコールのワインを使うこともできますし、ワインのアルコール分を沸騰させて飛ばすこともできます。ポートワインは、入れない、という選択のほか、ストレートタイプのぶどうジュースで代用すると甘さが加わります。最後に加えるブランデー、もしくはコニャックはお控えください。
こども用には、ストレートタイプのぶどうジュースで代用してください。(砂糖を省略できます。)
レシピ: くらもとさちこ