Gammeldags æblekage

昔風りんご菓子

デンマークでは8月下旬から早稲のりんごが店頭に並びます。冷たく湿った秋風を感じる頃になると、本格的なりんごの季節が到来し、さまざまな種類のりんごを見かけるようになります。中世以前からりんご栽培が盛んだったデンマークでは、「果樹園」という単語が「りんご園」と同義だった時代が長く続きました。りんごはデンマークの生活に密着してきた食材です。

緯度や日照時間などの影響でしょうか、デンマークのりんごは小ぶりです。有機栽培の野菜やくだものを始めとするオーガニック食品全般の普及率が世界的に高いデンマークでは、有機栽培の国産りんごも晩夏から冬が終わる頃まで、ごく普通に手軽に入手できます。四国と同じくらいの面積の小さな国ですが、デンマーク発祥のりんごの品種は350種類以上が登録され、一般のりんご園では、30種類に及ぶ品種が栽培されています。

デンマークでも「一日一個のりんごは医者知らず」と言われているりんご。学校や職場での休憩時間など、小腹が空いた時にも愛用され、道を歩きながらりんごをかじっている人もよく見かけます。りんごの木は一般の家庭の庭にも植えられていることが多く、たわわになったりんごを近くのりんご圧搾所に持ち込み、自然圧搾のストレート果汁のジュースにする伝統も引き継がれています。

朝の定番となっているオートミールのお供にもりんごがよく使われますし、お弁当用のライ麦パンにはさむ具の一つとしても定番です。週末の午後のお茶の時間には、りんごの焼き菓子が秋の定番。アーモンドミールやアーモンドと砂糖のペーストであるマジパンなどを加えたどっしりしたタイプに人気があります。りんごを使ったデニッシュも秋・冬の定番です。

りんごで甘味と食感の変化をつけたサラダは比較的新しい調理法ですが、冬野菜を瑞々しく食べる方法として一般化しています。にんじんとりんごを粗めにおろしてレモン果汁で和えたサラダは定番中の定番、子どもも大好きな一品です。赤ビートとりんごにおろした西洋わさびをほんのり効かせたの組み合わせもおいしい。薄くスライスした紫キャベツや細かく切ったケールのサラダにりんごを加えて甘みを添えたサラダにも人気があります。温かい料理では、豚との組み合わせが王道。炒めた玉ねぎとりんご、外は豚の厚切り三枚肉に絡めた一品は、今も秋や冬に作られている伝統料理です。火を通した玉ねぎとりんごの甘味と柔らかい食感が、中はふっくら、表面がカリカリに焼かれた豚の三枚肉を引き立て、素朴なおいしさです。冬の常備菜「紫キャベツの甘酢煮」もりんごが影役者です。

今回は、伝統スイーツ「昔風りんご菓子」をご紹介します。「昔風りんごケーキ」とも訳せるので、レストランでりんご入りのパウンドケーキのような焼き菓子だと思って注文したら、りんご煮のデザートが出てきてびっくりしたことが何度もあります。「昔風」が「りんごケーキ」の前につくと焼き菓子ではないのだと学んだ後も失敗を重ねました。今はさすがに間違えなくなり、りんごのピューレの柔らかさと甘さ、ナッツの香ばしさとカリカリ感、そして、柔らかく泡立てた生クリームのハーモニーの妙に感じ入っています。

誠文堂新光社刊の「北欧料理大全」では王道のレシピをご紹介していますが、ここでヘーゼルナッツのキャラメリゼを砕いてカリカリ感とコクを出したレシピをご紹介します。キャラメリゼはりんごを蒸し煮にしている傍で簡単に作れますし、数週間ほど日持ちするので、一度作っておくと、ヨーグルトやフルーツのお供として重宝します。ヘーゼルナッツのキャラメリゼの代わりに「オーブン焼きプラムとグラノーラ」でご紹介したグラノーラを使っても、ヘルシーでおいしい「昔風りんご菓子」になりますよ。ぜひお試しください。


昔風りんご菓子 


材料

<りんご煮>

  • りんご[*1] (皮をむいて角切りにする)300 g

  • レモン[*2] 1/2個

  • バニラ棒[*3] ¼本*(省略可)

  • 砂糖[*4] 50 g

  • 水 1/2カップ(100 ml)

<ヘーゼルナッツのキャラメリゼ>

  • ヘーゼルナッツ(ホール) 60 g

  • 砂糖[*4] 25 g

  • ベーキングパウダー ひとつまみ

  • 天然塩 ひとつまみ

<飾り>

  • 純生クリーム[*5]100 - 200 ml   

    (お好みで)はまなすジャムなど[*6]


作り方

 <りんご煮>

1.     皮をむき芯を除いたりんごを2cm角に切り、鍋に入れる。[*7]

2.     レモン1/2個分の皮をすりおろして鍋に入れ、果汁を加える。

3.     バニラ棒に縦の切り目を入れ、小さなナイフでバニラビーンズをこそげとる。

(バニラ棒をお使いでない方は、5.に進んでください。)

4.     砂糖にバニラビーンズを加え、バニラビーンズのダマがない状態にする。

5.     バニラビーンズ入りの砂糖と水を2.に加えて蓋をし、8〜15分火を通す。りんごが軽く煮崩れるのが理想的。[*8]

6.     鍋を火からおろしてレモン果汁を加え、りんご煮を冷ます。

<ヘーゼルナッツのキャラメリゼ>

1.     ヘーゼルナッツを耐熱皿に入れ、160°で10分ほどローストし、オーブンから出してナッツの粗熱をとった後、お互いを擦り合って皮をむく。

2.    フライパンで砂糖を薄いきつね色になるまで溶かす。

3.     ベーキングパウダーと塩を加え、カラメルを沸騰させる。

4.     全体を大きく混ぜ、ヘーゼルナッツを加えて、カラメルと和える。混ぜながら数分ほど火を通す。

5.     カラメルがけしたヘーゼルナッツをクッキングペーパーに広げて冷ます。

6.     ヘーゼルナッツをチョッパーもしくはフードプロセッサーで細かく砕く。ビニール袋に入れて麺棒などで叩いてもよい。

<組み立て>

1.     りんご煮をガラスの器に入れ、細かく砕いたヘーゼルナッツのキャラメリゼをりんご煮の表面にまんべんなくのせる。[*9]

2.     トップに柔らかくふんわりと泡立てた生クリームを飾る。[*5][*10]


NOTE:

*1 酸味のあるりんごがお勧めです。

*2 国産でワックスなしのレモンをお使いください。

*3 バニラパウダーでも代用できます。

*4. 砂糖はきび砂糖を使っています。りんごの品種で砂糖の量が異なります。お好みの量に調節してください。

*5. 味は異なりますが、水切りヨーグルトでも代用できです。私はお客様をお迎えしない時には、豆乳ヨーグルトを水切りしたものを軽くホイップして使っています。

*6. 通常、赤すぐり(グロゼイユ)のジュレを飾りますが、はまなすジャムでも代用できます。黒すぐり(カシス)のジャムでも。

*7. 赤い皮のりんごは、剥いた皮を一緒に煮ると写真のような色に染まります。

*8. りんごにしっかり火が通っても煮崩れない場合は、スプーンの裏などで軽く潰してください。

*9. この組み合わせをもう一度繰り返すのが王道。この記事の最後の写真を参照してくださいね。

*10. ふんわり泡立てた生クリームの上に、ちょこっとジャムを飾るのが王道です。


写真撮影: Jan Oster

<ご案内>
掲載写真はInstagram @sachikokuramoto.dkでもご紹介していきます。フォローで応援してくださると嬉しいです。

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